憎しみの心理構造と、癒しと和解への道

先日、1つの憎しみの感情が和解する出来事がありました。かねてより関係がこじれていた習い事の先生と、久しぶりにSkypeで話す機会があり、これをきっかけとして腹を割った対話をすることができたからです。

その先生とは、習い始めた当初から意志の疎通がうまくできなくて「合わないな」という思いを抱いていたのですが、少しずつのすれ違いの出来事が積み重なって、私は信頼をすっかり失っていました。

本当はすぐに関係修復に向けて動ければよかったのですが、胸に抱いている様々な不満を受け止めて聞いてもらえる気が全くしなかったので、腹に溜め込んだまま、半年余りを過ごしてしまいました。

そうして、習い事の方が完全に行き詰ってしまい、自分ではどうにもならなくなったので、仕方なくSkypeで連絡を取ることにしたのです。そのときは、適切なアドバイスもいただけず、モヤモヤが残ったまま終わりました。

ある意味、とても失望して困惑したのですが、このままではいけないと思い、翌朝、これまで腹に溜め込んできた様々なモヤモヤした気持ちを、不快感をただぶつけるという形ではなく、建設的なきっかけとする意図を込めて丁寧にしたためたメッセージを送りました。

私が不信感を抱くに至ったいくつかの出来事の経緯や、これまでの指導に対して困惑した点、本当はこうして欲しかったというニーズを、正直に、誠実に書いたのです。

このときに注意したのは、私の中の怒りや憎しみといった、痛みの感情のエネルギーは、自分で責任を持って受け止め、あくまでこれは今後健全な信頼関係を築くためのものであることを意図し、明記した点でした。

メッセージを送ってから返事が届くまでは落ち着かない気持ちでしたが、最善を尽くしたこのメッセージでダメなら仕方がないな、という覚悟はありました。

果たして、その日の昼に届いたメッセージでは、コミュニケーション上の不備を詫びる言葉があり、私が意図した健全な信頼関係を築いていくという部分に対して、同意していただけた言葉がありました。

これを受け取って、私は本当に、正直に自分の気持ちとニーズを伝えて良かったと心の底から思い、ホッとしました。ずっと心が張り詰めていたのでしょう。思わずうるっときたのですが、それだけ辛かったのだな、と改めて思いました。

私が半年間、先生に抱いてきた憎しみや不信感も、やっと解けていきました。本当は憎みたいのではなく、互いに理解し合い、信頼して良い関係を築いていきたかったのです。今、それができるベースができたことに、安堵の思いがしました。

憎しみを解いていこうとするとき、注意すべきは「決して自分の心の痛みを相手に投げつけない」ということです。これをしてしまうと、憎しみはさらなる憎しみを産み、憎しみの連鎖が延々と続いていきます。

これは絶対にしてはいけません。憎しみを抱くには、相手からされたことをきっかけとして、自分が何らかの苦しい思いをした経緯があったのでしょう。であったとしても、その出来事によって浮上した苦しみの責任は、自分自身が負わなくてはなりません。

それは元々、自分の中に既にあったものが、相手の行為によってトリガーされただけです。だから、完全に自分で責任を取ることができるものなのです。

痛みの反応としての応酬を思いとどまり、この苦しみを自分で受け止めるということが、まず第一になります。

これがある程度できた状態で、相手に対して誠実に、自分の中で起こった気持ちを在るがままに伝えます。そして、本当はどうしたかったのかというニーズを伝えるのです。

自分の気持ちと本当のニーズを告白するということは、ただそれだけのことですが、わだかまった心模様を芯から癒していく力がある行為です。確かにこれをするには勇気が要ることもあるでしょう。けれど、正しく行えば、必ずわだかまりを解いていくことができます。

勇気を奮い起こすには、自身の心を整える前段階が必要かもしれません。胸に抱いた苦しみを受け止める作業もそうですし、意図を正しく設定することもそうです。

「あなたのせいで私は苦しい。だからあなたが私の苦しみに責任を持つべきだ」という意図で相手に向き合っている内は、決して互いの間の憎しみは、解けることは無いでしょう。

和解は必ず、自身の苦しみの責任を自分で取った時に起こります。それは、痛みの反応の結果としては起こりえず、自身のあらゆる感情の責任を引き受けた「自立した一人の人間」として相手と向き合ったときに起こるものなのです。

このようにして相手に向き合ったとき、相手は私から痛みを受け取りません。このため、素直に私の状態を受け止め、本当はこうしたいというメッセージを受け取ってくれます。

誰しも、憎み合う関係は望んでいないと思います。絶望的なまでに相手に求め、叶わないので失望し、心の痛みに耐えかねて相手を憎むようになるのでしょう。こんな関係を解いていくには、まず自分が自身の感情に責任を持つところから始めるのです。

1000年の恨みも、同じ方法で解いていくことができます。あなたの中の恨みも、必ず解いていく道はあるのです。

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