よく、辛いことや都合の悪いことを
「無かったことにする」ことで、
その場を乗り切っていくという
処世術があります。
感情解放のセッションをしていても
非常によく見かけるもので、
珍しいものではありません。
私も、あたなも、誰しもが
多かれ少なかれやっていると思います。
意識的でなかったとしても、
都合よく忘れることのできる人も
あるようですし、
また心身に非常に重大な影響を及ぼす
トラウマ的な出来事が起こったときに
その部分、あるいはその時代の記憶が
すっぽり抜け落ちてしまうという現象も
知られています。
程度の大小はありますけれど、
いずれにせよ、実際にはあったのに、
「無かったこと」になってしまった出来事の
影響というのは、非常に対処が難しくなります。
「無い」のだから、対処するものが
存在しない状態になってしまって、
本当はそこで起こっていたすべての感情や
感覚、思いが、どんなにケアが必要な状態に
なっていようとも、本人にも見つけられなく
なってしまうのです。
その状態で人生が進んでいくと、
連続したタイムラインの途中で突然、
不自然に切り取られ、つなぎ合わされた
諸々の不調和のつじつまを合わせるために、
相当な無理を重ねないといけなくなります。
この負担というのが、その人の人生に
筆舌に尽くしがたい困難と苦しみを
生み出す元になっていることが
あるんですね。
セッションを重ねても、
なかなか変化が起きにくい。というより
全く変化しないというような場合は、
何かこうした要素がかかわっている
ケースも少なくないのかもしれません。
本人でも固く封印しているわけですから、
心当たりすらないわけで、
ものすごく努力しているのに、
結果がまるで出ないことで人一倍苦しみ、
自尊心がくじかれていたりします。
それが、あるとき何かの拍子に
突然、ポン！と出てくることがあります。
全く予想もしないタイミングで、
予想もしない流れで出てくる。
セッションの中でも、それまで
エネルギーを読んでいても見えなかったものが、
ある角度に入ったときに、はっと見える
こともあれば、
本人のちょっとした言葉にひっかかって
掘り下げてみたら、ごっそり重大な事案が
出てきたり。
そういうものが出てくるのは
本当に奇跡というか、導きとしか
言いようがないもので、
その人の準備ができて、
またその統合の導き手に十分に
導ける可能性がある場合に、
魂の深いところでGOサインが
出るのかもしれません。
そういう重大事案が明らかになって、
初めてその人の心の中で起こっている
不具合の本当の理由が分かってきます。
それまでやっていたセッションの
大前提がひっくり返って、
すべてを捉え直さなければいけない
ということもあります。
と同時に、不可解だった様々な
パズルのピースがはまり始めるのは
そういうときです。
そういうものがない人だったら
とっくに感じられて統合できているはず
のことが、なぜこれほどまでに
難しいのか。
秘密の扉が開いてようやく、
厚く霧がかかっていた景色に
おぼろげながらに、輪郭が浮かび上がり、
やがて真実からの叫びが
聞こえてくるようになります。
ここが一番慎重を期するべきところで、
それほどまでに厳重に封印したもの
ですから、それ相応の混乱のエネルギーが
そこにはあります。
断絶した神経細胞を再びつなぎ合わせるように、
その人の中ではものすごく大きな変化が
起こり続けており、
復旧された神経に、時間を止めて
そのまま固まっていた感情や感覚が
蘇ってくるのです。
故に、ここはその人が受け止められる分ずつ、
少しずつ命の呼吸をしながら受け止めていく
ことが大切です。
この時期は非常に不安定になるので、
慎重になる必要はありますが、
けれども、その人にとっては、
苦しいけれど、本当の自分自身に出会っていく
不思議な安心と喜び、そして腑に落ちる
感覚があるでしょう。
失われた自分を取り戻していく
プロセスですね。
たとえその自分が傷だらけで
息も絶え絶えの無残な姿であったとしても、
今のあなたには、その自分を癒す力が
あります。
解かれた封印は、元には戻りません。
動き始めたら、緩急はあれ、
完了まで止むことはないでしょう。
そういうプロセスを、
始めるかどうか。
それ以前に、
無かったことにした自分が
いるかどうか。
どうしてもつじつまの合わない
人生のつなぎ目の違和感の奥に
不穏な気配を感じる方は、
その可能性を疑ってみても
いいかもしれません。
すべての人に当てはまるわけでは
ないけれど、参考までに。