自身の感情を生きるということ

感情を感じてしまうと、自分の思うように進めないので、感情は邪魔なものであり、危険な障害物だと考える人は、少なくないようです。感情と上手に付き合うことをお伝えしている立場からすると、かつて自分もそうだったにも関わらず、そのように考える方とお話すると、あまりの世界観の違いにカルチャーショックを受けます。私だけではなく、相手の方にとってもそれは同じなのでしょう。

感情を抑圧して生きていると、だんだんと生きる気力がなくなっていきます。私は感情というものを、命の呼吸だと思っているのですが、感情を殺すことは、自然なエネルギーの循環を遮断することであり、それは呼吸を止めるに等しいことです。

生きることを拒絶された感情のエネルギーは、忘れてしまえばそれで終わるかと言えば、決して終わることはありません。このことを知らないばかりに、「もうそれは終わったことなんです」と言って、放置している人は多いです。

けれど、感情の基本的な性質を知っていれば、これはあり得ない対処の仕方であることはすぐに分かります。切り離し、封印された感情のエネルギーは、無意識の底から私たちの日常の気分に滲み出してきて、これといった理由も思い当たらないのに心を重くさせ、絶望や淋しさ、悲しさ、無力感といった感情に常に苛まれるようになります。

そしてまた、「鏡の法則」を通して、自分が辛い気持ちに一切取り合わず、頭で考えたシナリオを進めることに躍起になっているとしたら、周囲の人があなたに対して、あなたの辛い気持ちなど一切お構いなく、相手の都合をあなたに押し付けてくるといった状況を引き寄せるようになるでしょう。

周囲の人があなたに冷たかったりひどい仕打ちをしてくるのは、つまるところ、自分がその人たちのするように、自身に対して冷たかったりひどい仕打ちをしているということの表れなのです。

このことが理解できていないと、周囲の人を責めたり、そういう人たちとの縁を切ればそんな思いから解放されると思って、職場を転々としたり、友人関係を制限したり、なぜ自分はいつもこんな風に被害者になってしまうのだろうと悶々としながら、この世は苦しいことばかりだ、と考えるようになるのです。

自分は変わることなく、状況が変われば楽になれると考えるのは、間違いです。まず自身の在り方を改めることが無ければ、どんなに場所を変え、人を変えたとしても、同じことが繰り返されます。

その苦しい状況から、何かに気づいて方向転換しなければならないのです。

だからと言って、自身が危険にさらされるような状況にいつまでも居なければならないと言っているわけではありません。状況に、適切に応答してください。その上で、今現在の自身の在り方を振り返ってみてください。

自分を本当に大切にし、愛するほどに、あなたの現実は優しく愛に満ちたものになっていきます。あなたはどれだけあなた自身に目を向け、ケアできているでしょうか。

傷つき、へとへとになっている自分を責めたて、もっともっとと過剰な要求をしていないでしょうか。愛と休息が直ちに必要な状態になっていることにさえ気づかずに、これまで通りを続けさせることしか頭にないような、恐るべき無関心と非人間的な態度をとっていないでしょうか。

自身の感情や感覚を閉ざしている人は、自分とのコミュニケーションを取ることができません。頭で考えた理想や目標を達成することが最優先なので、それを邪魔するようなことを言いそうな感情や感覚の声をきくことは、都合が悪いのです。だから、Yesの答えしか言わせず、絶対にNoと言うことを自分に許さないのです。

こんな状態では、内なる声は本音を伝えることができません。

もしあなたが本当に辛くてその気持ちを分かってほしい時に、相手が自分の都合の悪いことには一切聞く耳を持っていないとか、有無を言わせず要求だけ突き付けてくるとか、あるいは訳が分からないふりをして逃げてしまうとか、そんな態度を取っていたとしたら、絶望と無力感、そして悲しみの中で、相手を見限るのではないでしょうか。

もし今、あなたが誰かに対してそんな気持ちであるのなら、相手があなたに対してしていることこそが、まさにあなたが自分に対してしていることなのだと知ってください。

こうした世界観をベースに見るならば、自分自身の気持ちと切り離されている状態の人が、仕事や恋愛、家族や友人関係でうまく行かないことが多いのは、実に当然と言えば当然のことなのです。

そして、そうした状況に対する根本的な処方箋とは、自分自身をどれだけ大切にし、愛することができるのかにかかっているということが分かるでしょう。

私自身、かつて感情を、人生においてもっとも役に立たず、邪魔な障害物であると考えていた時期がありました。思うようにならない感情に、いつも苛まれて厄介でしかないそれを持て余していたのです。

けれど、その厄介者だと思っていた感情に深く向き合い、様々な方向転換を重ねてきた結果、人生はとても生きやすく、優しいものになりました。

間違いなく世界は、私自身の在り方を映す鏡なのです。

この世界観をあなたがどう捉えるか、それはあなた次第です。知っているだけでは意味をなしません。ただ、実際にこれを実践し、生きてみれば、間違いなく世界がひっくり返るほどの変化を体験するでしょう。

自身の感情を生きることは、人生の秘密の扉を開けることでもあるのです。

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