すべてを受け取ることの恩寵

人づきあいでも食べ物でも、
私たちはしばしば好き嫌いをして
嫌いなものを遠ざけ、好きなものを
求めます。

もちろんそれが良いとか悪いとかではなく、
その感覚を抑圧することなく大事にして
応答していくことで、自分の居心地の良い
世界を整えることができます。

けれども、注意したいのは、
嫌いなものを徹底的に拒絶・排除して
好きなものだけで満たそうとすることは、
実はものすごい弊害を伴う行為なのです。

なぜなら、
好き嫌いという感覚は相対的なものなので、
「嫌い」を排除していくと、「好き」の
グラデーションの「嫌い」寄りの方が、
「嫌い」に変化しますね。

そうなると、今まで「割と好き」なカテゴリに
入っていたものが、「嫌い」に転落していく。

となると、どれだけ「嫌い」を排除していっても、
永遠に「嫌い」はなくならないわけです。

たとえば、今までものすごく嫌だった懸案が
解決してすっきりした!と思っていたら、

それまでその懸案に気を取られていて
あまりに気にならなかった別のことが
すごく嫌になって気になるようになったとか。

要は、その出来事自体が問題なのではなく、
本人の感じ方の構造的なところの方が
問題なわけです。

だから、あまり好き嫌いを追い求めすぎるのは
どうかな、と私は思います。

それからもうひとつ、嫌いを排除していくこと
の弊害を挙げるとするならば、

「嫌い」の感覚を感じないようにするために
「感じる感覚を閉ざす(抑圧する)」
ということがあります。

それを感じるのはあまりに辛すぎるので、
感じないように感覚をシャットダウンするんですね。

これまでにも何度も書いてきていますが、
辛さを感じる感覚と、幸せを感じる感覚は
同じところを使います。

故に、辛さを感じないように感覚を閉ざすと、
幸せも同時に感じられないように
なってしまうのです。

生きていく中でそれをしなければ
とても生き延びていけないような状況も、
人によっては経験されるでしょう。

だから、そのこと自体の是非を言うつもりは
ありません。

けれど、幸せも同時に失ってしまう
ということは、どうぞ覚えておいてくださいね。

そして、いつか自身の辛さを受け止める
準備が整ったときに、どうぞこのことを
思い出してください。

辛さを受け止めることは、同時に
幸せを取り戻すことなんだと。

まだまだ幸せになることができるんだという
希望を持ってください。

先日のワークショップの時に、
過去世で封印した深い深い悲しみを
受け止めていかれた方がありました。

その方は、かつてその悲しみを封印したときに、
同時に幸せも封印してしまったのでした。

なぜなら、
その美しい幸せな時間を思い出すたびに、
一層悲しみが深くなるからでした。

その悲しみが、とても耐えられなかった
のですね。

けれど今、悲しみの封印を解いて
精一杯それを生きたときに、
同時に封印していた幸せも戻ってきたのでした。

あんなにも素敵な宝物だったのに、
耐え難い悲しみとともにそれが在ったために、
閉ざさざるを得なかったのですね。

悲しみも喜びも、怒りも憎しみも、喪失感も
幸福感も、みな同じ人生の一部です。

それらは切り離して在ることは
できません。

だからどうぞ、自身が体験するあらゆる
感情・感覚を閉ざすことなく味わうことのできる
自分で在ってください。

深い喜びも、愛おしさも、魂の震えるような感動も
身を引き裂くような悲しみも、えり好みすることなく
在るがままに生きることができるように。

そのとき、人生は滞ることなく
自在に私たちを通過していきます。

心が凍り付いて、その人の中で時間が止まる
というようなことがないのです。

でもまぁ、凍り付いていても大丈夫です。
命の呼吸を送ってあげられれば、いつでも
解凍できますから。

いつまでも仮死状態で、死んだように
生きていなくてもいいのです。

ワークをしていると、そうやって仮死状態に
なったまま眠り続けている人生に、
いくつも出合います。

そうして今生、魂の蘇生技術(笑)を学んだ
自分が、過去世の自分に心肺蘇生法を施して
あげるんですね。

ものすごく辛い体験をした魂が、
そのままいくつもの人生を魂の一部が
凍り付いた状態とか眠り続けている状態で
過ごしていることはよくあります。

何とかして、解凍しよう、目覚めようと
彼らなりに奮闘しているんですね。
でも何度も挫折している。

今度こそ。必ず!

そういう願いを抱いて、
今あなたがここに生きているわけです。

だから、あなたの今がいかに無様で情けなく
思えていたとしても、あなたの人生は
断じて無駄ではありません。

誰も、私がこんな思いをしていることを
気付いてはいないだろう。想像もしないだろう。

そんなあなたの歩みのすべてを、
見ている。知っている何ものかが在る、
ということに、あなたはいつか
気づくかもしれない。

人知れず、泣き続けた日々を、
復讐に燃えた日々を、
幸せに感謝した日々を、
絶望に落ちた日々を。

そのすべてをじっと見つめ続けた眼差しに
気付いたときに、

あなたは自分の歩みのすべてを許し、
祝福できるでしょう。

好きも嫌いも超えて、
すべてを受け取ることの恩寵が
ここにあります。

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